集団における自己と他者の関係を良くしようとする傾向、またそのためのいろいろな能力。社会性が顕著なマーモセットで開拓すべき重要な分野である。社会性には数個の異なる側面がある。ヒトの研究ではTheory of mindが社会性の中心的要素として議論されるが、サルでTheory of mindを調べるタスクの訓練に成功した報告はない。
Noritake..Isoda (Nat Neurosci 21: 1452, 2018) 視覚刺激の後、報酬が確率的に出る(視覚刺激が自分と他個体の報酬確率を示す)。自分の報酬確率が変わるブロックと、相手の報酬確率が変わるブロックがある。他個体の報酬確率が上がると自分の報酬確率は一定なのにリッキング頻度が下がる(主観的価値が下がる)。 mPFCの細胞は自分の報酬確率と他個体の報酬確率を別々に表現した。ドーパミン細胞はふたつの情報を統合し、主観的報酬量を表現した。局所脳波の解析は情報が主にmPFC→ドーパミン細胞の方向に流れていることを示した。
一戸グループ、松崎グループの不公平忌避課題は同じ機能要素をテストするタスクである。
Kawai N, Nakagami A, Yasue M, Koda H, Ichinohe N (2019) Common marmosets (Callithrix jacchus) evaluate third-party social interactions of human actors but Japanese monkeys (Macaque fuscata) do not, J Comp Psychol 133: 488-495. マーモセットに二人のヒトの間の宝のやり取り(協力/独占)を見せ、その後どちらのヒトから餌をもらうか選ばせる。互恵的なヒトを選んだ。また、胎生期に母親がバルプロ酸に暴露された自閉症モデルマーモセットではこの能力が失われていた。マカクはこれができなかった。
Yoshida..Isoda (Curr Biol, 21: 249-253, 2011) 2頭のサルが対面。2個の標的のひとつが正解。5-17試行ごとに正解が変わる。1頭が標的にタッチ。他方は手元キーを押し続ける。正解への報酬は両方のサルがもらう。actorは2試行ごとに変わる。自分の行為よりも相手の行為に選択的に反応する細胞がdmFC (preSMAを含む)にたくさんあった。Yoshida..Isoda (Nat Neurosci, 9, 1307, 2012)は同じ課題で、他個体のエラーに反応する細胞がdmFCにたくさんあることを示した。Ninomiya..Isoda (Nat Comm 11: 5233, 2020)は標的を3個にし、局所脳波のGranger因果律解析により、PMv→mPFCの情報の流れを示した。
集団における自己と他者の関係を良くしようとする傾向、またそのためのいろいろな能力。
Theory of Mind:ヒトの社会性ではheory of Mindがよく議論される。他者の認識の認識である。他者の認識と事実の区別が前提である。側頭頭頂接合部(TPJ)が大事と考えられている。サルにはこの能力がないとする説が強い。
社会性の神経基盤に関する良い総説
サルを使った社会性の脳科学実験が問題にしているのは以下のような側面。
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