複雑な環境の中での意志決定では、搾取(exploitation)と探索(exploration)の切り替えが大きな要素である。搾取/探索の選択は反実仮想選択(counterfactual choice)のモニターと密接に関係している場合が多い。

【タスク代表例】

例えばFouragnan..Rushworth (Nat Neurosci 17:463, 2019)

マカクfMRI。3個の標的があり、それぞれの報酬確率が独立に徐々に変わる。各試行では3個からランダムに選ばれた2個の標的だけが提示され、サルはひとつを選ぶ。

探索へのスイッチを研究するには、探索対象の価値予測誤差が手元の対象のそれよりずっと大きい必要があるが、これまでの脳科学実験で用いられたタスクでは必ずしもそうなっていない。また、反実仮想選択のモニターでは、間接的な証拠から仮想選択の価値を推測することが大事だが、これまでの実験では毎回、あるいはひとつ前の試行で示されていたりして不十分である。

海馬の活動は非提示標的の報酬確率を表した。ACCの活動は確率の高い方の反現実仮想標的への次試行でのスイッチを予告した。また、ACCをTUS(経頭蓋超音波刺激)で抑制すると、このスイッチが抑制された。

スクリーンショット 2022-03-09 16.44.18.png

(詳説)意思決定:探索と反実仮想標的のモニター

複雑で変化する環境の中での意志決定では、搾取(exploitation)と探索(exploration)の切り替えが大きな要素である。搾取/探索の選択は反実仮想選択(counterfactual choice、選択しなかった行為あるいは行為の標的)のモニターと密接に関係している場合が多い。反実仮想選択の価値のモニターには、ヒトでは前頭極外側部が中心的な働きをするとの事実が集まっている。マカクではヒトの前頭極外側部に対応する脳領域はない。マカクでは前頭前野外側部前方または前帯状皮質が反実仮想選択の価値のモニターをしているとの結果がある。これまでの脳科学研究での反実仮想選択課題は本当の探索とは言えない。探索へのスイッチを研究するには、タスクに価値の予測誤差がずっと大きい探索対象を加える必要がある。

(課題一覧)意思決定:探索と反実仮想標的のモニター

<aside> <img src="https://img.icons8.com/ios/250/000000/banknotes.png" alt="https://img.icons8.com/ios/250/000000/banknotes.png" width="40px" /> ← 4. 意思決定:予測報酬価値による選択

</aside>

<aside> <img src="https://img.icons8.com/ios/250/000000/gift.png" alt="https://img.icons8.com/ios/250/000000/gift.png" width="40px" /> 6. 動機づけ →

</aside>



案B-3-2.png

マーモセット前頭前野の機能マッピングに向けたタスク指針

文責: 革新脳マーモセット脳機能データベース検討ワーキンググループ タスクセット検討小委員会 (中江健、宮本健太郎、中村克樹、田中啓治)

<aside> ©️ Copyright 革新脳マーモセット脳機能データベース検討ワーキンググループ タスクセット検討小委員会 2022

</aside>