行為の選択としての意思決定には多くの場合前頭前野が重要である。Perceptual decisionには前頭前野は必ずしも必要ない。行為選択には刺激ー結果連合による選択(前頭眼窩野が重要)、行為ー結果連合を使ったゴール指向的選択(内側前頭前野が重要)、刺激ー結果連合・行為ー結果連合より複雑な規則を適用する選択(外側前頭前野が重要)、複数の規則を切り替える、または新しい規則を作る場合(背内側前頭前野や前頭極が重要)がある。いずれにせよ、複数の行為からひとつを選ぶ場合は、それぞれの行為の結果の良さを予測して比較することになる。結果は多くの場合は報酬である。現実世界では複数の異なる種類の報酬の価値を共通な量(共通貨幣と呼ばれる)に変換して比べる必要があり、これには前頭眼窩野内側部(前頭前野腹内側部)が重要と報告されている。報酬を得るためには複数の候補の中からひとつの行為(または行為の標的)を選ばなければならない場合と、選択肢のそれぞれに確率的に報酬が与えられる場合、異なる種類あるいは量の報酬が与えられる場合などがある(自由選択と称する)。

【タスク代表例】異なる種類の報酬をもたらす行為の間の選択

Padoa-Schioppa, Assad (Nature 441:223, 2006)

注視中に左右に2セットの四角が提示される。四角の色がジュースの種類を、数が量を示す。注視点が消えたらサルはどちらかへサッケードすることで報酬を自由選択する。数の比を変えて選択させることで、サルにとってのそれぞれのジュースの主観的価値(共通貨幣価値)を推定できる。ふたつの選択肢を経時的に提示すれば、それぞれの表現を妨害する介入操作を加えることができる(Ballesta..Padoa-Schioppa, Nature 588:450, 2020)。報酬に遅延を、また行為に異なるコストのものを導入することで、主観的価値形成過程をより総合的に検討できる。マーモセットの場合は固視訓練が難しいので手での選択の方が良いと思われる。また、マーモセットでは摂水量が少ないので、タスク設計に工夫が必要。

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(詳説)意思決定:予測報酬価値による選択

行為の選択としての意思決定には多くの場合前頭前野が重要であるが、Perceptual decisionには前頭前野は必ずしも必要ない。行為選択には刺激ー報酬連合による選択(前頭眼窩野が重要)、行為ー結果連合を使ったゴール志向的選択(内側前頭前野が重要)、単なるマッピング以上の複雑な規則を適用する選択(外側前頭前野が重要)、複数の規則を切り替える、または新しい規則を作る場合(背内側前頭前野や前頭極が重要)がある。

いずれにせよ、複数の行為からひとつを選ぶ場合は、それぞれの行為の結果の良さを予測して比較することになる。結果は多くの場合は報酬である。現実世界では複数の異なる種類の報酬の価値を共通な量(共通貨幣と呼ばれる)に変換して比べる必要があり、これには前頭眼窩野内側部(前頭前野腹内側部)が重要と報告されている。

刺激―行為連合による行為選択と行為―結果連合による行為選択の違い、行為シーケンスの学習に関連するタスクについても紹介する。

(課題一覧)意思決定:予測報酬価値による選択

<aside> <img src="https://img.icons8.com/ios/250/000000/todo-list.png" alt="https://img.icons8.com/ios/250/000000/todo-list.png" width="40px" /> 3. 執行機能:タスクセットの切り替え

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マーモセット前頭前野の機能マッピングに向けたタスク指針

文責: 革新脳マーモセット脳機能データベース検討ワーキンググループ タスクセット検討小委員会 (中江健、宮本健太郎、中村克樹、田中啓治)

<aside> ©️ Copyright 革新脳マーモセット脳機能データベース検討ワーキンググループ タスクセット検討小委員会 2022

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