妄想・幻覚・思考障害などの陽性症状、感情平板化・思考貧困・意欲欠如・自閉傾向などの陰性症状、記憶力・集中力・判断力の低下などの認知機能障害が現れる。ドーパミン神経系の過活動が原因であるとの説が中心的である。プレパルス抑制(驚愕反応を引き起こす強い刺激の直前に弱い刺激を先行させると驚愕反応が大幅に抑制されること)の減弱が中間表現型として提案されている。これは自動的な予測の減弱であり、ミスマッチ陰性電位の減弱と同一事象と思われる。統合失調症の基礎に自己モニターシステムの劣化があるとする説もある(CD Frith, The cognitive neuropsychology of schizophrenia, 1992)。統合失調症では上述のタスクの多くに障害がでると思われる。
社会的コミュニケーションおよび対人的相互作用に持続的欠陥があり、反復的な身体運動と会話・固執や拘りを示す。自閉症患者では前頭前野内側部の活動が低下しているとの報告がある。WCST遂行成績が自閉症患者で低下しているとの報告(Rumsey & Hamburger, Journal of Autism and Developmental Disorders, 20:155, 1990; Leung & Zakzanis, Journal of Autism and Developmental Disorders 44:2628, 2014)、階層的文字課題(例えばたくさんのSで構成されたH)で個別文字に強い影響を受けるとの報告(Behrmann et al, Neuropsyhologia 44:110, 2006)があり、社会性だけでなく執行機能が広く低下している可能性がある(Fujioka, Jpn J Learn Disabilit 26:474, 2017)。
細胞内にαシヌクレインが凝集したレビー小体の沈着と大脳基底核の黒質緻密部のドーパミン細胞などの神経細胞が死滅が特徴的に見られる。レビー小体の沈着がドーパミン細胞に限局して始まると運動症状が中心のパーキンソン病になり、大脳皮質に広く起こると認知症状が中心のレビー小体型認知症になると考えられている。ともに嗅覚障害や睡眠障害から始まることが多いとされる。パーキンソン病では発症から10年以降に認知症状が現れることが多い。パーキンソン病の初期を捉えるには、認知障害でなく、嗅覚障害、睡眠障害、運動障害を調べるべきと思われる。
細胞外の脳組織におけるアミロイドβの沈着と神経細胞内におけるタウの沈着による神経細胞死が疾患原因の有力仮説である。まず海馬を含む側頭葉内側で、次いで頭頂葉、最後に大脳皮質全体に障害が広がると考えられている。対応して、記銘力障害から始まり、次いで視空間認知を含む認知領域の障害が現れ、最終的には全ての認知能力が障害される。初期の記銘障害をサルで調べる最も簡単なタスクはVisual preferential looking taskおよびVisual paired comparisonと思われる。これらは再認記憶のうちの自動的・受動的な過程である親近性記憶(familiarity memory)を調べる。
Wilson FAW, Goldman-Rakic PS (1994) Viewing preferences of rhesus monkeys related to memory for complex pictures, colours and faces, Behav Brain Res 60:79-89. 物体像を提示して最大5秒提示する。目線が物体から離れたら提示終了。同じ物体像を2回提示し、見た時間を1回目提示と2回目提示の間で比較する。健常サルは1回目提示のときに長く見る。この差をfamiliarity記憶の強さの指標とする。 右図はJutras & Buffalo (PNAS 107:401, 2010)から引用。
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文責: 革新脳マーモセット脳機能データベース検討ワーキンググループ タスクセット検討小委員会 (中江健、宮本健太郎、中村克樹、田中啓治)
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