中心はExecutive functions。Executive funcsionsは多くの認知と行為に共通の高次制御機能のセット。「実行機能」または「遂行機能」と訳されることが多いが、感覚情報処理や運動制御の具体面を含まない高次制御であるので、実行全体と区別し「高次」や「上位」などの意味を持つ語を含んだ訳語を用いるべきである。ここでは「高次実行機能」を用いる。高次実行機能には3基本要素として、反応抑制、ワーキングメモリーの更新、タスクセットの切り替えがある。高次実行機能以外の前頭前野機能としては、それぞれある程度限られた状況で使われる機能として、意思決定、探索、反実仮想選択のモニター、動機づけ、上位注意制御、メタ認知、社会性、自動的予測、空間注意などがある。意思決定は動機づけと一部重複する。

総説:Gilbert & Burgess, Curr Biol 18:R110, R110, Executive function

  [Diamond (2013) Executive functions. Annu Rev Psychol 64:135-168](<https://www.annualreviews.org/doi/abs/10.1146/annurev-psych-113011-143750>)

Executive functions(高次実行機能)の3基本要素

Miyake et al. (Cognitive Psychology 41:49, 2000)は、137名の正常被験者の9個の比較的単純なタスク(下図の右側)と5個の複合的タスク(Wisconcin Card Sorting Test, Tower of Hanoi, Random number generation, Operation span task, Dual task)の成績のばらつきを因子分析法のひとつであるCFA(confirmatory actor analysis)で解析した。その結果、高次実行機能はひとつの機能ではなく、反応抑制、ワーキングメモリーの更新、タスクセットのシフトの3個の基本要素を持ち、これらは互いにかなり独立であると主張した。これらが本当に独立であるか、また要素的であるかは別にして、この整理は高次実行機能として押さえるべきタスクの幅を考える際に有用である。

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前頭前野の定義

前頭前野の最も一般的な定義は「前頭葉の中で4層を持ち、かつ視床背内側核から投射を受ける領域」である。8野、9野、10野、11野、12野(または47野)、14野、45野、46野が含まれる。 前頭眼窩野のうち11野、12野、14野は4層を持つが、13野は極めて原始的な4層しか持たない(Barbas, Pandya, J Comp Neurol 286:353-375, 1989)。そのため、前頭眼窩野全体を前頭前野の一部とみなすことはできず、全体としては前頭前野眼窩部ではなく、前頭眼窩野と呼ぶことが多い。 前頭葉内側部のうち、マカクで帯状溝の腹側壁と帯状回に位置する領域(24野と32野)は4層を持たず、前頭前野に含めることはできない。一方、帯状溝前部の背側壁は4層を持ち、前頭前野の一部である(8Bm野と9m野に含まれる)。帯状溝前部背側壁、腹側壁、帯状回前部を含めて前帯状皮質と呼ぶこともある。マーモセットには帯状溝がないので、8野/9野と24野/32野の境界は決めにくい。

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マーモセット前頭前野の機能マッピングに向けたタスク指針

文責: 革新脳マーモセット脳機能データベース検討ワーキンググループ タスクセット検討小委員会 (中江健、宮本健太郎、中村克樹、田中啓治)

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