計算論的神経科学(Computational Neuroscience)は数理的アプローチを用いて脳や心を研究する分野です。計算論的精神医学(Computational Psychiatry)は、この中で統合失調症などの精神医学を扱う領域で、同名の国際雑誌が刊行され近年国際的にも認められる分野となっています。一方で、脳や心の疾患ですがアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患、てんかんや脳卒中など神経内科学(Neurology)に属する疾患に関して、計算論的な立場からまとまった分野としての取り扱いがなされていません。Computational Neurology研究会ではこれらの疾患に対する新たな分野を立ち上げることを目指しています。具体的な方向性としては、2ヶ月に1回の開催で日本における関心を調査し、コミュニティを作成することを目標にしています。学生、研究者の参加を歓迎します。原則的にオンラインでの開催を行う予定です。
共催:日本学術振興会 学術変革領域A「行動変容生物学」、自然科学研究機構・生命創成探究センター(ExCELLS)
オーガナイザー:矢田祐一郎(名古屋大学 大学院医学系研究科)、近藤洋平(名古屋大学 大学院医学研究科)、中江健(福井大学 学術研究院工学系部門)
2025年5月26日 第16回Computational Neurology Clubの概要を公開
2025年3月28日 第15回Computational Neurology Clubの概要を公開
2025年2月22日 第14回Computational Neurology Clubの概要を公開
2024年12月15日 第13回Computational Neurology Clubの概要を公開
2024年12月10日 第12回Computational Neurology Clubの概要を公開
2024年10月19日 第11回Computational Neurology Clubの概要を公開
2024年6月26日 第9,10回Computational Neurology Clubの概要を公開
講演者:川畑和也(藤田医科大学)
開催場所:Zoom
日時:2025/6/17(火)14:00-15:30 JST
タイトル:多系統萎縮症のMRI画像診断・進行バイオマーカーの確立に向けて
概要:多系統萎縮症(MSA)は、50歳代を好発年齢とする成人発症の神経変性疾患の一つで、進行が速く、発症後の平均余命は約10年とされている。自律神経症状、パーキンソニズム、小脳性運動失調症がさまざまな程度で組み合わさって出現し、突然死もきたすことも少なくない。現在のところ根本的な治療法はない、難病中の難病である。しかし近年、神経変性疾患において疾患修飾療法が登場する時代となり、MSAにおいても複数の候補薬が治験段階にある。こうした治療薬の開発において、発症早期に精度の高い診断が可能であること、ならびに進行の程度を他覚的に追跡・評価できることが重要である。 現在、MRIによる脳容積解析を用いた高精度な診断法の開発が多施設共同研究として進行中であり、あわせて縦断的画像を用いた進行指標となりうる画像マーカーについて報告を行った(Mov Disord 2025)。さらに、この画像マーカーを用いることで、発症前の超早期診断ができる可能性について見出した。 本発表では、私たちが取り組んでいるMSAに対する信頼性の高い早期画像診断法の開発について紹介する。